実は間違い?いつもの敬語を見直そう

社会人になると、ビジネスマナーのひとつとして身につける必要がある言葉使い。これまで使い慣れてきた表現が、正しいビジネス敬語とは限りません。とくに誤解されがちな言葉を把握しておかないと、周りの社員や取引先との信頼関係に支障が出るでしょう。そこで今回は、ビジネスシーンで指摘されることの多い、間違えやすいビジネス敬語を紹介し、正しい言い方や使うタイミングの注意点についてご説明します。

敬語で会話をする男性

間違えやすいビジネス敬語とは?

間違えやすいビジネス敬語には、まず「敬語と誤解されている表現」があります。代表例のひとつが、「さま(様)」を含んだ言葉です。

「ご苦労さま」「お世話さま」「どちら様」などは、尊敬語だと思って目上の人お客様に対して使うと失礼にあたります。一般的に「ご苦労さま」などは目上の人が使う言葉と見なされており、上司への挨拶としては不適切であるため使用は避けた方が賢明です。「どちら様」は敬語であるかどうか以前に、敬意を表すべき相手の名前が分からず「誰ですか?」と聞いている時点で、とても失礼な人と思われるでしょう。

「おられる」「参られる」「申される」も、相手に敬意を表する言い方ではありません。「おる」は「いる」、「参る」は「行く・来る」、「申す」は「言う」の謙譲語であり、自分側の行為に使うのが適切です。「~様はおられますか?」、「~様が参られました」、「~と申されています」は丁寧に聞こえるかもしれませんが、意味としては矛盾してしまい、実は間違っています。

二重敬語も歓迎されないため、注意が必要と考えられます。とくに気をつけたいのが、どんな表現にも「お~られる」をつけ足すことです。「お見えになられる」「お話になられる」「お帰りになられる」などは、最初の「お」があれば問題ありません。「お召し上がりください」や「ご覧になられました」という表現も、「召し上がる」「ご覧になる」だけで十分に敬語として通用します。

日本語として誤った使い方が、敬語として定着してしまった表現もあります。「~から」「~のほう」「~になります」などは、耳にした方も少なくないでしょう。これらの言葉を使うことで言い方が和らぐ印象があり、お店での注文や会計時にはよく聞かれます。しかし本来の日本語の意味をふまえると適切とはいえないので、ビジネスシーンでは控えた方が良いでしょう。

日本語を勉強する女の子

正しい使い方

敬語を正しく使うためには、日本語を見直すと良いかもしれません。仕事で忙しいなか、貴重な時間を日本語学習に費やすことは気が進まないでしょう。しかし、需要の高い表現だけでも理解を深めておくとかなり役立つと考えられます。

まず、覚えておきたい表現が、目上の人などへの挨拶です。仕事中であれば、働いている相手の労をねぎらう意味も込めたいところですが、「ご苦労さまです」ではなく「お疲れさまです」が正しいといわれています。上司が外回りから戻った時や、社内でいろいろな人とすれ違った時、あるいは会社の退出時など、多くの場面で活用できる便利な言葉です。

なじみの取引先や部署が違うのに面倒を見てくれる先輩には、たまに顔を合わせた時にお礼の気持ちを伝えたいでしょう。「お世話さま」を使うと不適切であり、「お世話になっております」が好ましい挨拶です。

謙譲語についても知っていると、敬意を表したい相手の行動に対して使わずに済みます。すでに紹介した「おる」「参る」「申す」だけでなく、「拝」のつく「拝見」や「拝聴」、「いたします」、「伺う」なども謙譲語です。これらは、自分側の行動に関して使うと相手に敬意を示せます。自分が出社しているなら「会社におります」、取引先に訪問するなら「そちらに参ります」あるいは「伺います」、伝言を頼まれたら「申し伝えておきます」という具合です。

ただし、正しい敬語でも使うタイミングを間違えると不自然になる恐れがあります。朝、いきなり上司に向かって「お疲れさまです」と挨拶したら、「まだ仕事してないから疲れていない」と切り返されるかもしれません。やはり朝は、「おはようございます」が妥当です。お昼から戻ってきた時も、言葉をかけるなら「お疲れさま」より「お帰りなさい」の方が自然でしょう

お世話になっている相手でも、同じ部署の先輩であれば常に顔を合わせていると思います。感謝の気持ちを伝えたくても、「お世話になっております」は他人行儀と受け取られるでしょう。お昼に誘われた時などを利用して「いつも指導して下さり、ありがとうございます」と伝えた方が、違和感はありません。

職場では仕事で成果をあげることが重要ですが、ひとりの能力では限界があります。望まれる結果を出すためには、周囲とのコミュニケーションが不可欠でしょう。言葉使いに注意するだけで仕事場の雰囲気は良くなり、取引先からの信頼も高まると考えられます。もし自信のない方がいたら、この機会に敬語の正しい使い方を習得しておいて損はないと思います。